概要
南アルプスの北側に連なる鳳凰三山は地蔵岳(2764m)、観音岳(2840m)、薬師岳(2780m)の総称であり、特に「鳳凰」と名の付くピークはない。
白峰三山を眼前にした絶景は言うまでもないが、甲斐駒ヶ岳同様、一帯は花崗岩の白砂に覆われて北アルプスの燕岳に似た特異な姿を呈している。
入山は
- 夜叉神峠
- 青木鉱泉からドンドコ沢
- 青木鉱泉から中道
- 御座石鉱泉から燕頭山
- 白鳳峠(広河原峠は考えにくい)
- 早川尾根
の一つから開始して、どれかのルートを下ることになる。
このうち、夜叉神峠から登るルートが比較的楽である。
公共交通機関を利用するなら、夜叉神峠から入り白鳳峠や青木鉱泉・御座石鉱泉に
下山するのが一般的。早川尾根を経由する場合は2泊以上が必要になるが、その他は
一泊コースが普通。できれば、鳳凰三山と早川尾根の山々を通して歩くのが良いだろう。
ドンドコ沢
ドンドコ沢は地蔵岳南面から発し小武川となる。一方、地蔵岳北面と
甲斐駒ヶ岳の間には大武川があり共に釜無川に注ぐ。
そして、釜無川は甲武信岳や西沢渓谷などの水を集めた笛吹川と合流する。
さらに笛吹川は県境を越えると富士川という名前に変わって駿河湾にと流れ込む。
ドンドコ沢登山口の青木鉱泉は海抜1100メートル程度で標高2764メートルの地蔵岳まで
一気に登るコースは急峻で厳しいが、途中にある滝を見ながら登れる点で他のコースには無い魅力
がある。
初日は滝を見ながらゆっくりと鳳凰小屋まで登り、翌日は地蔵岳・観音岳・薬師岳の稜線と絶景を楽しんでから薬師岳から中道で下山するのが車を利用した場合のお勧めコースとなる。
ドンドコ沢・中道の周遊コースの場合、薬師岳登山口(下山口)に車をデポすると都合が良い。
薬師岳登山口までのルートは中央道を利用する場合、韮崎ICか須玉ICを出てから国道20号に入り、諏訪方向に向かう。穴山橋を超え左手にナイトウ段ボール工場を見て小武川を渡ると直ぐに、青木鉱泉の大きな看板がある信号を左折する(
地図)。
約5分で幹線道路から左側の支道に入り、御座石鉱泉や青木鉱泉の道標を頼りに小武川沿いに進めば約40分で青木鉱泉に着く。中道下山口に車を置く場合は、青木鉱泉入り口の橋を渡らず、薬師岳の標識に従って更に左寄りに進む。
約10分チョット進むと、右に廃屋があり、薬師岳の登山口に着く。数台程度の駐車スペースがあるので、
適当な場所に駐車したら来た道をドンドコ沢登山道に合流するまで青木鉱泉方向に徒歩で引き返す。
青木鉱泉まで引き返さなくても、水量が少ない場合は、適当な場所で対岸に渡れば登山道である(
地図)。
南精進の滝
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ドンドコ沢ルートの最初の大滝が南精進の滝。
南精進と呼ばれるのは、対する北に精進の滝があるからである。
精進の滝は地蔵岳と燕頭山の稜線の逆側、大武川に注ぐ石空(いしうとろ)川にある(
地図)。
(散策道も整備されていて、規模も大きいらしいので、そのうち行くつもり)。
一番下の滝らしく、水量が豊富でなかなか迫力がある。
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鳳凰の滝
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南精進の滝の滝を過ぎると登山道は斜度をぐっと増してくるが、直ぐに鳳凰の滝の標識が見えてくる。滝は登山道を約5分程外れたところから見ることが出来る。
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ただし、次の白糸の滝と同様に近くまで寄るのは特別な装備でもなければ殆ど不可能。
この写真ではわかりにくいが、急峻な流れ(左上が下流)にもし足を滑らせようものなら
どこまで落ちていくかわからない。
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白糸の滝
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鳳凰の滝から厳しい斜度を延々と登るドンドコ沢の核心部分に突入する。
ここは、じっくりと我慢しながら登る以外に手はない。
急な登りにうんざりしたところに白糸の滝があるので、ゆっくりするには
いい目標になる。遠くから見てもなかなか趣のある滝だが「白糸」と呼ぶほど
繊細であるかどうかは、人によって受け取り方が異なるだろう。
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五色の滝
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両手を使ってはい上がるような登山道も、最後の五色の滝まで来れば残り僅か。
五色の滝の標識が見えたら、荷物を担いだまま登りの登山道を左手に降りて沢沿いに滝壺まで登って行く。標識付近に荷物をデポして往復する人もいるが、実は滝の左岸を登って元の登山道に戻れる。
五色の滝はかなりの落差がある立派な滝である。それにしても、標高2000メートルを超える所に
これだけの水量を常に流し続ける山の保水力には今更ながら驚かされる。
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五色の滝からはしばらくすると斜度もだんだん緩やかになり、いったん下るとドンドコ沢
源頭部の川原に出る。右寄りにしばらく歩けば鳳凰小屋に着く。鳳凰小屋には泊まったことは
ないが、天場は良く整備されていて快適だ(ただし、何故か石を使ってテントを固定することは
禁止されている)。
地蔵岳・観音岳・薬師岳
地蔵岳
鳳凰三山の最も北に位置するのが地蔵岳である。
地蔵岳山頂にはオベリスクと呼ばれる岩塔がそそり立ち、山麓からもその姿を見ることができる。記録上、最初に塔の上に登ったのはウォルター・ウェストン。
1904年、何度も塔の上に投げ挙げて引っかかったザイルを使って攀じ登ったらしい。
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観音岳方面から見た地蔵岳と甲斐駒ヶ岳。
鳳凰小屋から地蔵岳まで右部分の白砂を登るが、写真を見てもわかるようにかなりの急登。
右下の樹林帯を抜けると直ぐに白砂をズルズルさせながら賽の河原まで登る。
朝一番の眠った体には少々きつい。しかし、この急登を日の出前にこなせば以下のような
絶景が待っている。
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例え下界の天気がすぐれなくとも朝早く出かけてみる価値は十分にある。
明け方の雲は低く、雲海から朝日が出る様はすばらしいの一言。
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まるで雲の波が打ち寄せるような錯覚に陥る(地蔵岳、賽の河原)。
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どこまでも続く雲海に思わず立ちつくす。
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地蔵岳の夜明け。
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そそり立つ塔は昔から信仰の対象となっていたのも頷ける(裏手から登れるが危険)。
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賽の河原には今も多くのお地蔵様が並んでいる。
その昔、子宝に恵まれない夫婦がここで一体を借りて下山する。
そして、子宝に恵まれば借りたお地蔵様と、さらにお礼のお地蔵様の二体を持って
元に戻すという習わしがあったそうだ。
その際太鼓をドンドコ叩きながら登った事からドンドコ沢と言われている
(その急峻な斜面故に水が激しく流れる様を称してドンドコ沢という説もあるようだ)。
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観音岳
賽の河原からは稜線を赤抜け沢の頭に向かう。
赤抜け沢の頭は観音岳・地蔵岳、仙丈岳、甲斐駒ヶ岳、白峰三山を展望する絶好の場所。
早川尾根からの道が合流する赤抜け沢の頭から観音岳、薬師岳へと続く稜線は
鳳凰三山の白眉といえる。
花の季節ともなれば、白砂に紫のタカネビランジ等いろとりどりの花が咲く。
急がず花と展望を楽しみながら、赤抜け沢の頭から一旦下って登り返せば
鳳凰三山の最高峰観音岳に着く。観音岳からは周囲360度遮るものがない。
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特に眼前の白峰三山はすばらしい。右より北岳、間の岳、農鳥岳。
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時間が許す限り展望を楽しんだら、残り僅かな稜線を薬師岳までゆっくり歩く。
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薬師岳から見た観音岳。薬師岳と観音岳間は大体20分程度。
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観音岳から薬師岳を見る。このコースは、常に富士山を正面に見ながらの稜線漫歩となる。
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観音岳から薬師岳
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南アルプスは富士山との組み合わせが絵になる。
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富士山右下の薬師岳頂上が鞍部のようになっている部分の先が中道に繋がる。
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中道
薬師岳で十分休んだら薬師小屋に下りる斜面とは逆に「青木」の標識(岩にも書いてある)
に従って前日に停めた車まで中道を下りる。道ははっきりとしており、特に
危険なところはないが展望もない。今まで獲得した標高を消費するためだけに
樹林帯をひたすら下るのは少々辛いが仕方がない。下りにウンザリしたころに
林道を横切る。林道が出てきてホッとするが、実は更にウンザリするほど
下って、廃屋の横に出ればやっと車を回収できる。