2006年−南アルプス縦走(北岳、間の岳、塩見岳)

予定では 北岳−>熊ノ平−>塩見岳−>三伏峠−>高山裏避難小屋−>悪沢岳−>二軒小屋−>転付峠 と抜けるつもりだったが、台風10号の影響を考慮して三伏峠から鳥倉林道へ下山。

一日目(8/12(土):甲府のビジネスホテル泊)

甲府に移動するのに1日を費やすというのは贅沢な気がする。 ただ、日数は十分にあるし、何より天気予報は明日(日)から安定と報じているので 第一日目はゆっくりと鈍行に揺られながら旅情気分を移入することにする。

小田急町田、横浜線で八王子、JR高尾で乗り替えて甲府まで。 甲府のビジネスホテル に予約したが、お盆ということもありシングルサイズの部屋が一つだけ空いていた。 そこに布団2つ、二人でしめて¥5000なり。

夕方は甲府の町をブラブラ散歩。 とっ、一天にわかにかき曇ると同時に北岳方面からすさまじい雷鳴と雨。 今日登っていたら初日からメゲルことになっていた。

二日目(8/13(日):北岳肩の小屋、天泊)

今日は北岳肩の小屋まで。
ホテルを3:30に出る。 もちろん、フロントには誰もいないが鍵をテーブルの上に置いて出ることは ホテル側も予め承知のこと。 駅前には既にかなりの人があり、バス会社の担当者が車の割り振りなどを始めている。

甲府駅前4:00、バス4台を連ねて一路広河原へ。 次のバスは9時まで無いが、芦安から出るバスが何本かあるらしい。 約2時間かけて広河原に到着。 登山届けを出し、指導員らしき人に尋ねると北荒川岳と雪投沢は 幕営禁止とのこと。できれば、どちらかで一泊して蝙蝠岳に寄りたいとも 考えていたが今回はあきらめることにした。

6:30過ぎに吊り橋を渡り登山開始。

毎度お馴染み、大樺沢から見上げる北岳の頂。

今回は八本歯のコルに直登せず、右の小太郎尾根に上がる。

ミヤマハナシノブ(ハナシノブ科)[深山花忍]
この花にふさわしく何とも耳に心地よく響く名前。

[似た花]

ハンゴンソウ(キク科)[反魂草]
高さ 1 〜 2 メートルになる大型の多年草。
花は以下のキオン(黄苑)に似ているが、葉が羽状に 3 〜 7 深裂して容易に区別でる。 「反魂」とは魂を呼び戻すことで、下を向いた葉の裂片から幽霊の手を連想して名付けたもの。 帰化種のオオハンゴンソウとは名前は似ているが、花の大きさが全く異なる。
キオン(キク科)[黄苑]
名前は同種のシオン[紫苑]の紫色に対して黄色の鮮やかな花が咲くことから。 花はアキノキリンソウ(下)より大きく良く目立つ。
ミヤマアキノキリンソウ(キク科)[深山秋の麒麟草]
別名:アワダチソウ
別名は花がお酒を醸造している時に生じるあわ立ちに似ていることから。 平地に普通に生育するアキノキリンソウの高山種。 アキノキリンソウの花序は縦に長く伸びて付く傾向があるが、 ミヤマアキノキリンソウは茎の頂端にまとまって付く(コガネギクの異名もある)

ザック重量25Kg、稜線まで上がるのに一苦労。それでも昼頃には肩の小屋に到着。 テントの申し込みをする(肩の小屋での幕営は初めて)。

水は小屋で売っているが「下に100m行けば水場」があるのでどちらでも好きな方をどうぞといわれる。 「ならば、北岳山頂からしみ出る一滴を!」と標識に従って小屋の左斜面を下る。

写真で見るようにムチャクチャ険しい。それに水の気配が?
ハイ、「100m」は標高差!!
やっと着いたが水量は細く約6L溜めるのに10分以上。 一生懸命水を溜めていると上からガラガラと落石の音!  肝を冷やしながら見上げると、おじさんが「あっ、しまったぁ!」ってあなた 何やってんのぉ!!
程なく水場に着いた途端に「やぁ、申し訳ない。ウイスキーをかなり飲んじ まって…、こんなに急とは…」。 ハイ、肩の小屋の水場は必ず宴会の前に行きましょう!

天気は概ね晴れだが、次第に雲が湧き始める。太陽と雲が入れ替わる間 にブロッケン現象を見ることが出来た。

夜に雨が降り出す。 気温は多分10度内外、予備のダウンジャケットが役立った。

三日目(8/14(月):熊ノ平小屋、天泊)

今日は北岳山頂を越え、中白根、間の岳、三峰岳と頂を越えて熊ノ平まで。
5時前に出発。途中で鳳凰三山(観音岳と薬師岳の間)からの日の出を見る。 前日よりも天気は良さそう(過去4回を含め、北岳山頂付近で晴れたのは今回位)。
タカネマンテマ(ナデシコ科)[高嶺マンテマ]
咲いているときの花は横向きだが、種子になり始めるとだんだん上を向くらしい。ということで、写真は花も後期?
タカネナデシコ(ナデシコ科)[高嶺撫子]
これと上のタカネマンテマが同じ仲間?

[猿!]

驚いたことに北岳山頂周辺でサルの群れを見た。雷鳥が急激に減っていると いう話を聞いたことがあるが、確かに心配。

北岳・中白根・間の岳はもちろん3000m超、三峰岳も2999mと3000m(級)稜線漫歩は岩々の連続。

三峰岳から熊ノ平に繋がる稜線。
三峰岳手前で両俣小屋からの道と合流する。 熊ノ平には三峰岳に直登する。

三峰岳を越えれば徐々に標高を下げ農鳥小屋からの巻道と合流したところが 三国平。その後樹林帯に入り、程なくすれば熊ノ平小屋に着く。

熊ノ平小屋(塩見岳登山口から)
熊ノ平は素晴らしい!
  • まず水。ホースからドンドン流れ出る水は冷たく、うまい!
  • 次に眼前に聳える農鳥岳。ベンチに座り、眺めながらのビールは最高!
ベンチに座り農鳥岳を肴にビールで乾杯!!

四日目(8/15(火):三伏峠小屋、天泊)

今日は塩見岳を越えて三伏峠小屋まで。
天気は前日同様、概ね晴れ。 今回縦走のハイライト。長く、そしてタフなコース。
間の岳と農鳥岳の間から朝日が昇る。
安倍荒倉岳を過ぎ北荒川岳手前までは徐々に高度を上げ、南アルプスらしい樹林帯が続く。
時折見える塩見岳の力強い山容。三伏峠(右端の先)はまだ遙か。
約100m強の急登をやっとの事でこなし北荒川岳に立てば、眼前に 北俣岳の急峻さと塩見岳の重量感が凄い!

雪投沢源頭部から北俣岳山頂に一直線に突き上げる(曲げようにも曲げられ ない)登山道がその剣呑さを物語っている(ナイフリッジ!)。

まだまだ20Kgを軽く超えるザックを背負って山頂までは相当の体力が必要だ が「塩見岳」はこの登りを味わってこそかもしれない。

北荒川岳先のマルバダケブキ群生地からの塩見岳。
残念ながら塩見岳に達する手前でガスが発生。山頂では全く眺望は得られなかった。

※塩見岳山頂から天狗岩間は鎖や梯子等一切無い険しいガレ場が続く。
※落石や滑落に充分な注意が必要。

塩見小屋で一休みしたら、本谷山・三伏山を越えて三伏峠小屋に向かう。 熊ノ平から塩見小屋までが約6時間、塩見小屋から三伏峠小屋までは約3時間。 塩見岳を越え、今日の目標を達した後の脱力感を伴った三伏峠小屋までの3時間は結構キツイ。 それでも2時前に着き、テントの申し込みをする。

テントを張り、ビールを飲みながらラジオ等から今日は念入りに天気情報を得る。 台風10号が近づいているからだが、明日予定通り高山裏まで進んでしまうと 長くて3日は下山できない。明日までは持ちそうだが、その後はヤバイかもしれ ないと判断し、明日は鳥倉林道から下山することに決定。 荷物も大分軽くなったし、タフなコースも越えて絶好調になってきたが自然が相手 ではかなわない。 三伏峠小屋から鹿塩温泉・山塩館を予約してもらう(同じ経営)。

五日目(8/16(水):鹿塩温泉 山塩館(「日本秘湯を守る会」の宿)泊)

今年から鳥倉登山口まで午前と午後各一便のバスが運行している。 午後2時20分のバスなのでノンビリ烏帽子岳方面を散歩するがガスで展望は無 いのでお花畑を散策してからゆっくり下山。
コイチヨウラン(ラン科)[小一葉蘭]
苔むした地表や倒木に生える小さいラン。目立たないので見逃してしまうことが多い。 鳥倉林道に下山途中で見つけた。

バスは伊那大島(駅・インター)直行便と各停の2台が同時に現れる。 我々二人は途中の「塩の里」下車なので各停に、他は皆直行便にと分かれる。 運転手に宿名を告げると、バスにもバス停にも他に客がいないので、バス停を やり過ごし何と宿の前で泊まってくれた。

宿にチェックインしたら、肌にこびり付いた汗と「塩」を一刻も早く洗い流したいので 直ぐさま着替えて温泉へ。 ザッと流してから湯船に飛び込むように入る。温度は好みのややぬるめ。 お湯は無色透明。ふと、湯に浸かった指を舐めてみて気がついた 『鹿温泉 山館』! そう、塩泉!

飲用可と書かれた流れ口から柄杓で一口、そのショッパイこと!
体にこびり付いていた自家製塩と岩塩が入れ替わっただけ!!
(※宿の名誉のために: とても良い温泉。機会があれば、また訪れたい!)

六日目(8/17(木):帰宅)

宿からバスで伊那大島駅。飯田線(の超鈍行約2時間)で岡谷。岡谷からスーパーあずさで八王子。 更に横浜線・小田急と乗りつないで帰宅。

まとめ

天候には恵まれた。

ただし、台風10号が近づいていることから約半分の行程で三伏峠から下山した。 三伏峠から先に進むとなると以後大体3日は下山できない。天気予報からすれば 2日くらいは大丈夫のようだったが最終日がどうなるかわからない。 台風の速度やコースが変化した場合、影響で局地的に大気が乱れることも考慮 すれば妥当な判断と思う(何らかのトラブルが予想される場合、中止は常に正しい)。

食料

衣類

ザック重量は25Kg程度。